ネット証券が普及したことでスマホから資産運用が手軽に始められる時代になりました。さらに「新しい資本主義」の促進で今後ますます投資家の割合は増えていき、企業運営においてもIR活動の重要性が増してきています。
そこで今回は、IRチームからIRデザインの基本をご紹介します。

IRとは何か

 

IRとはInvestor Relations(投資家/関係・交渉)の略です。
企業が株主や投資家向けに経営状態、財務状況、業績の実績、今後の見通しなどを広報するための活動を指します。
具体的な活動はWebサイトでの情報開示をはじめ、、経営内容を開示したディスクロージャー誌の送付、決算説明会や各種説明会の開催工場や施設などの見学会を実施するなど独自のIR活動を行う企業もあります。

 

IRデザインのターゲット

IRデザインのメインターゲットとなる投資家は大きく以下の3種類に分類され、それぞれ目的や注目するコンテンツが異なります。

1.個人投資家
資産を増やすことを目的にした一般の投資家です。投資手法は人によって様々です。
個人投資家は財務データよりも事業内容や株主優待への関心が高い傾向にあります。一方で、人によって経験や情報収集力にバラつきがあるため、専門用語を多用しすぎない等わかりやすいコンテンツづくりが求められます。

2.機関投資家
生命保険会社、投資信託会社、損害保険会社、信託銀行、年金基金などの顧客から集めた資金を運用・管理する法人投資家を総称します。
法人内のアナリストやファンドマネージャーはIR情報を随時チェックして分析しています。分析しやすいように月次の売上高やセグメント情報などを提供していく必要があります。

3.外国人投資家
日本の株式市場で売買している外国籍の個人投資家・機関投資家を総称して言います。
近年では日本株市場の約6割を外国人投資家が占めており非常に大きな影響力を持っています。
外国人投資家は直接な言い回しのトップメッセージやプレゼンテーションなど企業と投資家のコミュニケーションや信用に繋がるコンテンツに注目する傾向があります。

投資家によって重視するポイントが異なることから、自社のIRデザインは主にどういった投資家に向けてのものなのかを明確にする必要があります。

 

IRデザインでの問題点と課題

IRコンテンツは投資家から様々な視点で見られるため、必要な情報が網羅されていることが必須です。しかし情報が煩雑になり、以下のような問題が発生してしまいます。

・企業内で情報の整理ができていない
・文字、数字のみの資料になり読みにくい
・説明の順序がバラバラ
・図表が複雑化してしまう
・使用する色やフォントサイズが多数あり、どれが重要なのかわからない

情報が整理されていないと結論や重要な項目が伝わりにくい、重要な情報が伝わらなく間違った情報が伝わってしまうなど企業のアピールが十分にできない原因になってしまいます。
投資初心者や海外投資家にも正確に情報を伝えるためにもデザイン・内容共にシンプルにわかりやすく伝えることが課題になります。

 

IRサイトのデザイン

IRデザインでは『ユーザビリティに配慮したデザイン』が必要となると考えています。
特に投資家の情報源となるIRサイトでは各投資家が目的の情報に辿り着きやすい構造、シンプルで使いやすいデザインを基本に、メインターゲットとなる投資家へ効果的な情報提供ができるように優先させるコンテンツ作りや機能の工夫をしていくことが求められてきています。

実際にユーザビリティに配慮しているIRサイトと工夫しているポイントを紹介していきます。

 

Zホールディングス株式会社
IRコンテンツは数字やPDFデータの掲載が多くなりがちですが、統合報告ポータルを特設サイトとして作成して、最新の国内利用者数、売上達成など、株主が気にする数字の情報やマテリアリティ(組織にとっての重要課題)をイメージ画像とあわせてわかりやすく掲示しているのが大きな特徴です。

IR情報ページのトップでは最新情報が優先的に掲載し機関投資家を、トップメッセージでの直接的な言い回しや顔が見えるイメージ写真で海外投資家を意識された内容となっていますが、統合報告ポータルで情報の取得に慣れていない個人投資家への配慮も感じます。

https://www.z-holdings.co.jp/

 

アステラス製薬
複雑になりがちな資料の中で注目してほしいコンテンツの中でも決算関連資料、説明会資料、統合報告書のリンクをトップページにQuick Linkとして目立つように掲載しています。
また、業績・財務情報ページではブラウザ上でユーザー自身グラフ表示とテーブル表示、比較したい情報をソートして表示できるように見やすい工夫がされています。
画像やエクセルデータでダウンロードできるようにもなっており機関投資家のアナリストやファンドマネージャーが解析に使用しやすいようにされているのも大きな特徴です。

https://www.astellas.com/jp/

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。
投資家と言っても一般投資家、機関投資家、海外投資家で注目する情報が違うため、すべてのニーズに答えながら特にメインターゲットとなる投資家へ向けてのアピールが必要です。特に多くの投資者の情報源となるIRサイトはコーポレートサイトと合わせて今後さらにユーザビリティが求められます。

投資判断となる重要なコンテンツだからこそ、デザインを通して企業の魅力や実績を確実に伝えることが課題となります。
今後さらに進化していくIRデザインに注目です。
私たちは今後も調査を続けてまいります!